1.牧は消費-資産価格モデルのフレームワークを使い、日本におけるリスク・プレミアム・パズルの評価を行った。リスク・プレミアム・パズルは合衆国において多数の研究があるが、日本ではその分析例は多いとはいえない。本研究の特徴はシミユレーション分析ではなく、データに基づいた実証分析である。このような実証分析は合衆国でも多くはない。その理由は、合衆国においては資産を数種類に分けると安定したパラメターを推定することが難しいからである。本研究において、伝統的な資産市場の完全性を仮定したハンゼン・シングルトン・モデルではリスク・プレミアム・パズルに解答を与えることができなかったが、資産市場の不完全性を仮定した取引コストモデルによってパズルをある程度解くことができた。この分析を1998年1月にシカゴで行われた計量経済学会の北米冬季大会で報告した。 2.吉野はいくつかの分析を行った。日本の金融システムは、銀行や証券会社の清算に伴う信用不安とともに、預貯金選択などの金融資産選択は大きな変化を示している。今年度の実証分析では、都道府県別データを用いて、地域の特徴を考察すると同時に、預貯金選択の特徴を研究した。金融資産の選択に関して、1980年から1995年の時系列データと47都道府県データをプールし、(1)店舗が近くにあるのかどうかの利便性、(2)金利の差、(3)金利が上昇局面にあるのかそれとも下降局面にあるのか、(4)安全と人々が思っているかどうか、といった要因に依存していることが実証された。これらの分析の一部は1997年11月に行われた金融学会秋季大会において「預貯金選択と利便性」という題で報告した。
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