1. 牧は消費-資産価格モデルのフレーム・ワークを使いながら、日本におけるリスク・プレミアム・パズルの評価を行った。昨年度の分析では、資本市場が完全であると仮定したハンゼン・シングルトン・モデルではリスク・プレミアム・パズルは説明できず、資本市場の不完全性を考慮し、取引コストを導入したモデルによってリスク・プレミアム・パズルを説明しようとした。それによってリスク・プレミアム・パズルのある程度の部分を解明できたと考えた。今年度は消費-資産価格モデルに習慣形成仮説を導入した。その結果は習慣形成仮説でリスク・プレミアム・パズルを解くことは難しいかもしれないという実証分析の結果を得た。この結果の解釈に関してはもう少しモデル全体を吟味する必要かあると思われる。 2. 吉野はいくつかの分析を行った。本年度の研究では、(1)わが国の住宅金融の特徴を研究し、財政投融資の出口機関である住宅金融公庫を中心とした長期の融資に依存している点を述べ、2001年からの用政投融資の改革の中で、諸外国の住宅金融政策を参考にしながら、どのような方向がありうるかをまとめた。(2)景気対策としての公共投資の効果を巡って、大きな論争がなされている。いわゆるケインズ乗数が低下しているのではないか、地方の公共投資は有効であるのかといった点について、実証分析を行った。(3)我か国の金融システムは大きな転換点を迎えている。日本の金融制度の問題点、その将来について、実証的な分析を行っている。
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