1.牧は消費-資産価格モデルのフレームワークで習慣形成仮説のテストを引き続き行った。習慣形成仮説の有効性に関しては、今のところ、否定的な結論が出ている。また資産選択における資産の実質化の方法をめぐる議論の一つとして、等効用水準の物価指数の測定について考察を深めた。消費者にとっては資産選択と消費支出が代替的な選択になるからである。この分析では、消費者の効用関数を特定化し効用関数のパラメータを測定した。その上で、価格変化が起こった2時点において、満足水準度を一定とした(等効用)指数を計算している。さらに資産選択をめぐる政策的観点から法と経済の分野における消費者契約法に関する実体的なテーマにも取り組んだ。 2.吉野は地域別・時系列のパネルデータを用いた実証分析を行った。実証分析においてマクロの視点ばかりではなく、ミクロベースの議論にも関心をおいた。特に家計の資産選択に関する都道府県別・時系列分析、社会資本の効率性に関するパネルデータ分析を行った。地域別の資産選択の特性もさることながら、利便性が高まると家計の資産選択の度合いが高まること、大都会では地方に比べ金利の感応度が高くなっていること、金利の上昇期と下降期では個人の預貯金行動が変化することなどが実証的に導かれた。また、財政投融資の景気浮揚に関する効果の分析や信託の経済分析、いくつかのシュミュレーション分析を通じた政策効果に関する分析も行った。これらの効果については今後の経済運営のあり方についてもいくつか重要な示唆が生まれるであろう。
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