研究概要 |
本年度は、個別事例研究に入る前段階の作業として、「職能」という考え方が登場した背景とそこに想定されていた「能力」概念の確定にかかわる聞き取り調査および資料募集を,主として経営者団体(日経連)に即して実施した。また、パイロット事例調査として、松下電器産業の資格,賃金制度の変遷について,組合側への聞き取り調査を実施した。具体的には次の通りである。 (1)職能給、職能資格制度に関する先行研究の整理。人事労務管理、賃金理論、労動問題の各研究分野ごとに、これまでの研究動向と主要な論点を整理した。 (2)日経連『能力主義管理』(1969年)の策定にかかわった関係者のヒアリング。日本的な能力主義管理の考え方を最初に提案した日経連能力主義管理研究会の事務局を担当した二人の実務化に、「能力主義管理」登場の背景とその具体的な中身、債金・能力開発との関連について聞き取りを実地した。 (3)日経連の昭和30年代以降の人事労務政策の変遷にかんする資料募集。日経連の機関誌『経営者』の記事動向を精査しながら、1960年代の経営政策において、労務管理問題が労使関係から賃金・人事処遇制度に転換する構図を探った。 (4)昭和40年代以降の松下電器産業(株)の賃金・資格制度展開にかんするヒアリングと資料調査。電機労連(当時)の同一労働同一賃金政策のパイロット・ケースと見なされる同社の仕事別賃金の成立と変遷について、同社労組の歴代の賃金担当者に聞き取りを実施した。
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