研究課題/領域番号 |
09630030
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経済政策(含経済事情)
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小笠原 浩一 埼玉大学, 経済学部, 教授 (30204051)
|
研究分担者 |
大木 栄一 日本労働研究機構, 研究所, 副主任研究員
林 大樹 一橋大学, 社会学部, 教授 (70180974)
佐藤 博樹 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60162468)
|
研究期間 (年度) |
1997 – 1999
|
キーワード | 職能資格制度 / 人事トータルシステム / 能力主義管理 / 職務給の職能給化 / 松下電器産業 / 三菱電器 / 新日鉄 / 日本鋼管 |
研究概要 |
この研究は、戦後わが国で主要な人事制度として機能してきた職能資格制度を歴史的に考察したものである。新しく得られた知見は以下の通りである。 1)1950年代の職務給導入は、アメリカ式職務給の直輸入ではなく、年功管理との調和を重視した日本特有の「能力」観と伴っていた。この事実は、日経連『能力主義管理』を「アメリカ式近代化からの日本回帰」と理解する通説の妥当性に疑問を投げかける。 2)先行研究では、長期雇用慣行に伴う総人件費の自動増大を回避する方策として「能力主義管理」が登場したと理解される。しかし、『能力主義管理』は、異なる戦略や事例・経験が統合されており、当時、「能力」を重視した人事システムヘの移行が焦眉の課題だったといっても、経営課題の見定め方や制度設計のあり方について、考え方の幅が存在していたことを示している。 3)「職能資格制度」については、「能力開発主義」の枠組みで捉えるのが通説であるが、年功主義からの脱却と終身雇用規範の組み合わせとしての能力主義=職能資格制度と捉えきることが可能であることが分った。このことは、「能力」そのものが勤続年数指標と連動しており、職能資格制度は本質的に年功的な序列のもう1つの表現形式ということになる。 4)日経連『新職能資格制度』は、こうした年功指標と連動する「能力」を「職能志向」へ転換するものであった。『新職能資格制度』はシステム工学的発想でできあがっており、長期雇用慣行を前提にしない論理を内包していた。しかし、実際に導入された制度は、「職務遂行能力」秩序とキャリア形成を重視する形で制度設計されており、理念と制度との間に不整合が発見された。 5)1990年代以降、人事処遇制度が、労働市場の外部化や成果主義などの考え方に沿って変貌してきており、雇用と処遇の関係が、内部労勧市場を前提とした処遇体系から、雇用を総額人件費管理の手段とする体系に逆転しようとしている。にもかかわらず、「能力主義管理」を超えるような新たな人事パラダイムは未形成であることがわかった。
|