本研究は、現代日本経済の危機と再編の論理をめぐり、3年間にわたり実施される予定で、本年度はその初年度にあたっていた。全体としては、本研究は1970年代に始まる世界経済の危機と再編の中で19世紀末以来の資本主義の歴史的発展傾向がいくつかの面から逆転されて、競争的な市場原理にもとづく資本主義経済の基本的作用が再強化されているのではないか、という私の「逆流仮説」を日本経済について検証しつつ、新自由主義、高度情報化、グローバリゼーションの意義を再考する課題にあてられている。 本年度は、予定にしたがい内外の文献や資料の収集、従来の私の準備的論稿の再点検をすすめるとともに、日本経済の1970年代以降の動態を7つの時期に区分して、景気循環的観点から再考する作業、ならびに新たな問題点の発掘をすすめた。 その間、幸い7月から9月にかけて2ヶ月シドニー大学で世界資本主義と日本経済について週3回ずつの講義を担当し、学生やスタッフの研究者たちと親しく交流したことは、本研究の推進に大に有益であった。また11月には学術交流団の一員として北京を訪れ、主に中央党校で研究成果や問題意識を交流したことも本研究のために役立った。 これらの経験をつうじ、現代経済のグローバリゼーションの必然性と意義、ならびに日本資本主義の超低成長への推移が、学術的にも世界的な関心をよんでおり、本研究にとっても大切なテーマとなることが判明した。すでに中間的成果として本年度に発表した論文にもそのことは反映されている。また、1970年代以降の日本経済の動態分析は英語の論稿The Long Downturn of Japanese Economyにひとまずとりまとめられている。これも一部に入れて、本研究の成果は英語の著書にとりまとめる予定であるが、それに先立ち次年度には日本語での著書を準備し出版するよう、成果発表の順序は入れ替えることとしたい。
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