本研究は3年にわたる実施を予定しており、平成10年度はその第2年度にあたっていた。昨年度までの研究にもとづき、とくに(1)バブルの発生と崩壊の論理と90年代不況、(2)資本主義経済のグローバリゼーションの現代的特徴と日本経済へのその影響、(3)少子化高齢化と日本経済の超低成長へのシフト、(4)周辺アジア諸国の通貨・金融崩壊と日本経済の不況の深化との関係などに、本研究のテーマとの関連で考察をすすめた。 5月にはオックスフォード大学、ロンドン大学、パリのCEPREMAPにたちより、論稿The Long Downturn of Japanese Economyをめぐりセミナーを開くなど、日本経済に関心の深い研究者たちと情報や問題関心を交流させることができた。さらに10月には北京の中央党校大学院での中日学術交流会議の席上で論文「グローバリゼーションのもとでの日本資本主義」を報告し、これへの質疑をふくめ多くの研究上の示唆をえた。さらに3月にはミュンヘン大学、カリフォルニア大学での国際学会にまねかれ、論文Globalization and the Japanese Economic ImpasseとHousing Finance in Japanese Financial Instabilityをそれぞれ報告する準備をすすめている。 それらの経験をも活かしつつ、11月末には本研究のこれまでの成果を、著書『日本経済を考え直す』(岩波書店)としてとりまとめ、出版することができた。とくに1973年以降の日本経済の危機と再編過程で、高度情報化のインパクトをもうけて、女性の就労比率が高まるとともに、家庭生活が変容し、少子化がすすみ、そのことが中・長期的に日本経済の成長トレンドの低下に大きな影響を与えていることを、ひとつの重要な問題として提起することができたと考えている。 これらをうけて平成11年の初頭から、最終年度における本研究全体の英文著書としてのとりまとめに備え、草稿の執筆・準備にとりかかっている。
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