本研究は3年にわたる実施を予定しており、平成11年度はその最終年度にあたっていた。昨年度までの研究にもとづき、当初の予定にしたがい、研究成果の英文著書としてのとりまとめをすすめた。そのさい本研究の中間的総括としてとりまとめた著書『日本経済を考え直す』(岩波書店、1998年)が活用されたが、それに加え、(1)日本経済における経済格差の拡大傾向と90年代不況へのその影響、(2)資本主義経済のグローバリゼーションの現代的特徴と日本経済の位相の変化、(3)少子化高齢化と日本経済の超低成長へのシフト、(4)周辺アジア諸国の通貨・金融崩壊と経済危機と日本経済の不況の深化との関係などに、さらに補足的に検討をすすめた。 1999年3月にはミュンヘン大学、3月末から4月初旬にかけてはカリフォルニア大学での国際学会にまねかれ、論文Globalization and the Japanese Economic ImpasseとHousing Finance in Japanese Financial Instabilityをそれぞれ報告したが、これらも本研究の拡充に役立った。 最終成果の英文の校訂には、幸い、ロンドン大学のC.Lapavitsas博士の全面的で好意的な協力がえられ、8月以降、電子メールでのファイルのやりとりがとくに有効に利用された。加えて、10月16日の経済理論学会年次大会に出席し報告するためにLapavitsas博士が来日し、1週間國學院大學の宿舎に滞在したので、とくに集中的に英文の校訂、内容の改善についての打ち合わせをすすめることができた。内容的には、最終章について、日本の金融・経済システムの特性と周辺アジア諸国の比較と関連について、貴重な示唆をえた。 こうしたいくつかの幸運にもめぐまれ、1999年末には本研究の最終報告書の主内容をなす著者、The Japanese Economy Reconsideredの原稿がほぼ完成し、Macmillan社に送付された。すでにその内容につき海外の研究者の幾人かからも問い合わせに接し、2000年7月にシドニーのマクォーリー大学主催の国際会議でその一部を報告する予定もたてられている。
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