研究概要 |
(1) 雇用の弾力化と労働政策における規制緩和は労働基準,労働市場,雇用管理,労使関係の全領域にかかわる,従来の労働保護のための規制をゆるめることを意味している。労働者派遣事業の規制緩和は、構造的失業の解決をもたらすのではなく、むしろ失業と不安定雇用を増加させる畏れが強いこと、また民営職業紹介事業の自由化は雇用機会自体の拡大をもたらすものではないこと、民営業者は高い手数料を確保できる高賃金労働者に職業紹介の重点をおく傾向がみられることを示した。 (2) イギリス、ドイツを対象にして、これまで民営職業紹介事業や労働者派遣事業の公認などの規制緩和がどのように進められてきたのか、それによって失業問題の改善にどのような役割を果たしたのか、増加した雇用の内容はどのようなものか等について、各国政府、経済団体の統計や資料、大学など研究機関の調査報告、労働組合の資料等を収集して分析した。また、新たにアメリカの雇用の弾力化にともなう雇用構造の変容、特に臨時雇用の増加が労使関係にたいしていかなる問題をもたらしているかについて考察した。 (3) 民営職業紹介事業・労働者派遣事業に関するILO第181号条約について、1997年6月のILO総会での審議経過にさかのぼって検討を行い、新条約は民営職業紹介事業、労働者派遣事業の規制緩和を容認するだけではなく、これらの事業を利用する労働者や求職者の保護を図ることに主たる重点がおかれていることを明らかにした。
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