ベトナム経済に関する中長期展望のモデルについては、現在、その拡張と精緻化について作業中であるが、その途中経過を国際産業連関学会(ニューヨーク)で報告予定である。 次に、中国経済の中長期展望モデルについては、まず第9次5ヶ年計画期(1996-2000年)に対して計画の評価を試み、次に、同モデルを中国環境問題へ適用し、CO2排出削減のための炭素税導入の効果を定量に分析した。現在、日本モデルに基づく同様の分析と比較して、炭素削減の日中共同実施(Clean Development Mechanism)について定量的分析を試みつつある。この環境分析は、7月のモデル分析の国際会議(ウィーン)で報告したいと考えている。 この中国モデル分析の補完研究として、中国生産性分析をおこない、特に、資本ストックと総要素生産性(TFP)を同時に推計する簡便法を考案した(学術雑誌に投稿中)。これを他の東アジア、ラテン・アメリカ・アフリカ適用し、生産性の国際比較を試みることも考えている。 残りの東アジア諸国の場合、タイとインドネシアについて既にパイロット・モデルを作成し、1997年後半の通貨・金融危機をごく簡単に検討した。平成10年度においては、当面安定的に推移している台湾も加え、東アジア通貨危機のモデルによる詳細な分析を試みるつもりである。 以上のモデル分析は、貨幣的側面を明示的に考慮できるCGE(Computable General Equilibrium)モデルに基づいており、生産・消費等の実物的側面のみならず、インフレ、賃金、為替レート等貨幣的側面の分析も可能である。
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