ベトナム経済に関する中長期展望のモデルについては、1998年5月ニューヨーク市立大学で開催された国際産業連関分析学会において、作業の途中経過を報告した。 中国経済の中長期モデルについては、第9次5ヵ年計画期(1996-2000年)に対する計画の評価を試みた後、それを長期(1996-2010年)の中国環境問題へ適用し、CO2排出削減のための炭素税導入の効果を定量的に分析しつつある。同様の分析手法と枠組みを日本経済に適用し、地球温暖化の京都会議で提案されたクリーン開発メカニズム(CDM)の定量分析を試みつつある。 また、地域計画の視点から、中国四川省を対象とする同様の分析、および中国を四川省とその他に分けた2地域モデルによる分析を試みつつある。これら中国モデル分折の補完的研究として、全経済および地域・省レベルの生産性分析を行い、資本ストックと総要素生産性(TFP)の新しい推計方を提示すると同時に、中国における地域格量拡大の要因を生産性の観点から定量的に明らかにした。 残りの東アジア諸国の場合、タイ・インドネシア・台湾を対象にパイロット・モデルを作成し、経済危機の簡単な分析を試みた段階にあり、詳細な分析は次年度の課題として残されている。インドネシアについては、地域モデルに基づく地域計画の定量分析も試みつつある。 以上のモデル分析は、貨幣的側面も考慮できるCGEモデルに基づいており、生産・消費等の実物的側面のみならず、インフレ・賃金・為替レート等貨幣的側面の分析も可能である。
|