研究計画最終年度にあたる平成11年度は、主として中国を対象とする中長期の評価・展望モデル(他部門一般均衡型のCGEモデル)を作成・拡張し応用することに専念した。第一に、これまでの10産業モデルを35産業に拡張し、開発計画・開発政策の産業分析を詳細に行うことが可能になった。このモデルに基づき、例えば2020年までの、長期シミュレーション分析を行うことも可能である。第二に、このモデルをWTOへの加盟を目指した中国の貿易自由化計画に応用し、計画が予定どおりに実践された場合どのような影響が中国経済に生じるかを1997〜2010年のマクロ経済および産業レベルで分析し、マイナスの影響を最小に抑えるための方策について検討した。第三に、このモデルを、地球温暖化防止のため二酸化炭素の排出削減を日中間で共同実施するケース(CDMの1つの可能性)に適用し、日本が京都議定書の2010年に対する目標を達成するのに、中国からどの程度の協力を得、中国経済はどのように影響をこうむり、中国に対する対価はどの程度か等を分析した。第四に、この全中国モデルを地域モデルに拡張し、実験的ではあるが、四川省とその他中国の2地域リンクの中国モデルを2010年までのシミュレーション分析に摘要できることを確認した。このような地域モデルに基づき、地域に焦点をあてた開発計画・開発戦略の計量分析が可能になる。平成11年度は、中国と類似の全国モデルと地域モデルを、インドネシアとタイについても試みた。 また、最終年度にあたって、これまで3年間の研究成果に関する報告書を、特に中国を中心にとりまとめた。
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