研究課題/領域番号 |
09630042
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
竹野 忠弘 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (80216928)
|
研究分担者 |
コンダカル ミザヌール・ 日本福祉大学, 経済学部, 助教授 (10281487)
小井川 広志 名古屋学院大学, 経済学部, 助教授 (50247615)
|
キーワード | 人材開発 / 開発政策 / 技術移転 / 技能育成 / 雇用政策 / 人事労務管理 / 技能育成 / アジア経済 |
研究概要 |
前年度における成果をもとに、今年度(平成10年度)は、人材開発投資および投資効果をどのようにモデル化するかについて、共同研究者3名で月1回のペースで頻繁に議論を進めた。また国際経済学会支部研究会での共同報告、研究論文の個別執筆等も行った。3名の一連の活動は、以下のような仮説モデルに基づき、資料収集を重ね実施された。 教育投資の効果を、学歴別の就業後の賃金水準の経年変化-就業年数もしくは年齢-から、日本および香港、シンガポールについて、試行し比較検証した。人材開発投資を学歴投資として捉え、学歴の差が賃金曲線にどのような変化をおよぼすか、学歴修得者と同学歴非修得者との賃金の偏差を数値化し評価した。その結果、経験的にいわれているように高位学歴に移行するほど賃金水準は上昇するとともにその上昇率も高くなることが確認された。しかしながら、こうした賃金格差が教育投資にもとづく人材への投資効果、すなわち教育の結果として、物的生産性が増加したのか、疑問が残った。特にアジア諸国の経済成長の構造から判断して、付加価値生産額は、投資の急流入による労働市場の逼迫の結果、賃金が上昇し押し上げられたのではないか、したがって物的な労働要素生産性はなかったのではないか(クルーグマンの指摘同様)、さらに流入した資金が学歴を就職条件とする職種別階層的な賃金体系と高位職種に厚い国内総付加価値分配を経て高位学歴者に厚い賃金分配をもたらしたのではないか、という問題点が明らかになった。むしろ経験的に高位職種に就業可能である人材を政策的に育成した結果として、投資誘致および雇用の輸入効果を通じて国民経済の成長がもたらされるという構造が指摘できる。3ヵ年の本プロジェクト最終年次の次年度に向けて、有識者や企業経営者への意見聴取を重ねながら、労働生産性概念および物的生産性概念を再考することを軸に、人材開発政策の投資と効果についての評価手法について、さらに議論を深めモデルの精緻化を図ってゆきたい。
|