最近の約15年間における世界の原油・NGLの生産・貿易・消費について、以下の点の統計的確認を行った。1.非OPEC産油国における原油生産の頭打ちと、北米における輸入原油への依存度の上昇、2.原油供給の中心が、徐々にOPEC諸国、とりわけサウディ・アラビアへ移りつつあること、3.OPEC主要諸国の1980年代後半以降の石油化学基礎製品生産能力の拡大と、財政状態の改善、である。これらの点から、OPECは原油市場での影響力を回復する可能性を強めている、との見通しを得た。 また、当該社会の特性を踏まえた上で課題に取り組む必要があるため、当初の計画にはないイスラーム経済と資本主義との比較検討を行った。A.スミスとバーキルッ=サドルの代表的著作の比較から、以下の知見を得た。1.欧米型の開発政策がとられた場合、要求される対外経済政策と、イスラームの基本的価値観に基づく国内経済政策との間に相違が生じる可能性が理論的に存在する、2.イスラーム経済体制においては、国際収支管理、等、国家間の諸問題に対する関心が希薄である、3.中東産油国が属するイスラーム世界において意識される「市場」は、必ずしも欧米型の自由競争市場を意味しない、4.イスラーム的価値観において貧困ではないとされる生活水準の下限は、不安なく生活しうる一般的な水準であり、富者との比較において定められるものではない、である。 尚、様々な要因により、1980年代後半から実質原油価格は「石油危機」以前の状態に近づいたが、この水準は産油国の開発と安定には不十分であり、また、社会経済構造の変化の結果、産油国の安定条件として原油意外からの収入の重要性が増しつつあるが、関連する統計分析は確定するに至っていない。研究途上に明らかになった重要な論点である金融システムの安定性とともに、継続する課題としたい。
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