本研究は、地域経済における公的投資の経済効果を見ることに焦点をあてるためにシミュレーションモデルの開発が必要である。このために、九州地域、福岡を中心とする経済データの基本的データベースを作成した。これらは、市民所得、などのマクロデータ、資本ストック、人口および公的投資に関するものである。ただ、市民所得データは毎年さかのぼって改定されるためこれを維持管理することは極めて困難であるが、できる限り原データの維持管理に努めた。また、この分析を進めるに当たって、景気指標、経済動学、また、計量モデルのパラメータの推定に関する研究を行った。地域モデルの構成は、市民所得(実質、名目)ブロック、物価・デフレータブロック、産業活動別ブロック、労働ブロック、所得分配ブロックおよび人口ブロックの7ブロックからなっている。日本経済は外生的に導入し、GDPの動向が福岡の経済にも影響し、また、福岡の公的投資水準がこれらの地域の経済変数に影響を与えるモデルとなっている。近年の日本経済の動向は極めて不安定であるが、このような状況を反映した地域の経済データは公表時期の関係から得られないが、幾つかの想定を行い2010年までの予測を行っている、また、福岡市の公的投資をトレンドからのものと近年の地方財政の逼迫度を考慮したシミュレーションを試みた。暫定的ではあるが、1990年代初期と異なり、公的投資の乗数効果は低下してきている。この間、消費税、老人医療費などの制度改定が行われており、これらを考慮したモデルの改定を進める必要性を感じている。
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