若年労働の失業率は近年上昇傾向にあり、特に15〜19歳の男子の失業率は1996年には10.2%を記録した。失業率は労働供給と労働需要の不均衡に起因し、この不均衡は経済的な要因以外にも影響を受けるので、この研究においては失業率上昇の要因を包括的に分析することを目的とした。 労働供給サイドの要因として、労働力人口、労働移動、地域間移動、そして学卒後の進路の変化より考察を試みた。失業率の上昇を分析するにあたり、若年労働の労働力人口全体にしめる比率を充分に考慮することが重要である。また近年、常用労働以外の就労が増加しており、その影響が失業率にも影響している。また若年者の就労に対する意識の変化が、たとえば地域間労働移動を減少させたり、仕事にたいして新しい価値観をもたらしている。供給サイドの要因として特に留意すべき点は、学校卒業後無業者になる若年がここ2、3年著しく増えていることである。 労働需要サイドからは、構造的要因と景気循環的要因の観点より失業率上昇を考察した。バブル崩壊後の景気後退にともない新規採用をひかえる企業が多い。このことは、「日本的雇用慣行」の変化の兆候ともうけとれる。女性の勤続年数の長期化、そして流動的なパートタイム労働の増加が若年労働と代替されていることも、若年失業をおしあげる要因と考えられる。 入職率の低下、離職率の低下、失業期間の長期化、新規学卒者の就職率の低下、転職コストの低下、そして無業者の増加等の統計デーダより包括的に判断すると、若年労働の失業率増加の要因は、摩擦的失業の増加とともに、景気後退によりアン・スキルド(unskilled)な労働者がその影響を受けているからであろう。
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