今年度は、店頭公開企業への技術開発アンケート、世界的技術革新を遂行している大企業の技術開発と特許戦略に関するヒアリング、ベンチャー企業および技術開発型中小企業の行動原理の理論的整理などを中心に研究した。分析結果を要約すると次のようになる。 (1)競争力の強い技術開発型中小企業は概して、開発の時間軸を「長期」に設定し、他社が簡単には追随できない独自の強みを生かす設計能力とともに、生産技術においても固有のノウハウの蓄積を通じた技術的「コア」を構築している。取引先での市場ニーズやよいアイデアを持っている人から情報を得る。販売面では外部能力を活用し自社体制を補完することも考える。(2)日本の大企業の技術取引では「特許のみ」契約やそのクロスライセンシングが急増している。同時に、技術変化の激しい事業分野では、事業展開時に技術開発を行う必要が生じるであろう技術分野を予め特定し他社に先行して特許を取得し、将来の事業化の際の「知的財産法面での強み」を形成しておくことが不可欠となっている。(3)企業の競争力を高めるには、他社よりも速く事業化し、実効的な革新を行うこと必要であり、イノベーターのリードタイムこそが事業利益を生む傾向を強めている。技術変化が速い領域では、単独企業だけでの速やかな研究・技術開発を遂行できなくなり、同時に技術取引活動がグローバル化しており、技術開発上の先行をもくろむ国内外での企業間提携も増加している。
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