研究概要 |
今年度は次の2点について研究を行った。 I.研究開発投資の理論化 第一に研究開発投資の決定理論の検討を行った。ここでは財務理論を利用したR&D投資行動の理論化を前提とした。これは研究開発投資を設備投資と同様に理解し,研究開発投資プロジェクトの採算性の観点からその投資水準決定理論を提示する方法である。この観点からq投資理論を応用したR&D投資の決定理論を検討した。しながら,このような投資活動の不確実性を強調し,したがって,R&Dの結果実現されるキャッシュ・フローも不確実であることを重視して,オプション理論に基づく投資活動の定式化が必要である。この点に関して,Pyndyck and Dixit,Caballero等によって展開されている最近の投資理論を踏まえた理論化を行っている。この理論化の一部を論文として発表した。 II.R&D投資水準の決定要因の実証研究 第二に,実際に製薬産業のデータを利用して,R&D投資決定要因を推定する。R&D投資は企業にとって複数の投資活動の一部であり,設備投資,外国投資との関係を検討する必要がある。このため,複数の投資プロジェクトに対する投資理論を使用する。また,企業のR&D投資と企業価値あるいは無形資産の価値との間には同時性を前提とする必要がある。さらに,製薬産業のR&D投資に影響する固有の要因を推定する。これは日米企業を対象として行う。 この点については予備的な研究を行い,発表した。
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