研究概要 |
研究第2年度の研究を次のように行った。第1は研究開発費の源泉となる企業利益について,その正確な評価方法について検討した。これまで企業の研究開発投資の基礎となる利益については会計的利益が暗黙のうちに前提とされ,その利益概念そのものについては十分な議論が行われずに実証研究が行われることが多かった。そこで会計的利益率,経済的利益率を区別し,さらに企業価値に関して,市場価値と本源的価値を区別して,利益率概念の理論的検討を行った。この成果は「製薬企業の利益率:評価方法の理論的背景」に要約されている。 第2は製薬企業の利益あるいはR&D投資の利益性が,そのアウトプットである医薬品価格に影響される一方で,日本の医薬品価格は薬価制度によって規制されていることに着目して,薬価低下政策と医薬品需要,企業利益,R&Dプロジェクトの利益性の間の関係を検討した。日本の薬価低下政策は逆に需要量を大きく拡大したことを示した。この結果,製薬企業の利益は必ずしも低下せず,さらにR&D投資は縮小しなかった。これは「薬価低下政策と医薬品需要の実証分析」(投稿,審査中)に要約されている。 第3は,医薬品の研究開発における社会的共通資本の役割を検討し,R&D投資に果たす社会的共通資本の役割を理論化した。これは「医薬品の研究開発と社会的共通資本」に要約されている。
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