研究概要 |
本課題研究は2年間継続の予定であるが、本年度は、1990年代のアメリカの産業的再生に関して、アメリカの主要産業の企業が、特に1980年代以降追求してきたリストラクチャリングの試みの実態とその成果を主に研究した。第1に、伝統的基幹産業であった自動車、電機、鉄鋼産業の経営リストラクチャリングのあり方、伝統型労使関係の変容の実態と問題点を具体的に追求することを試みた。リーン型生産システムの導入、部品調達の革新など、日本型経営・生産システムの諸要素の組み込み(いわゆるジャパナイゼーション)の問題や、国際比較の視点から、1997年春のイギリスにおける日系電機企業やイギリス・フォードの経営実態の現地調査の成果との比較検討も進めた。第2に、1990年代の産業的再生の焦点となっている「ハイテク部門」に関して、情報通信産業や半導体産業などの発展の現状に関して、一昨年のシリコンバレーその他の現地調査をベースに、その他の文書資料とあわせて分析を進めた。第3に、長期的歴史的な背景を解明する意味で、第二次大戦期の実態分析の成果を出版する作業も進めた。中間的な成果と今後の研究課題として以下の点が明らかになった。(1)1990年代の企業活力・収益性の回復で、1980年代にリストラクチャリングの効果が見て取れるケースが多い。しかし、依然、産業・企業間で対応に差がある。(2)経営リストラクチャリングの有力な手段として、情報通信新技術革新が幅広く活用されている。他方、工場現場の生産システムに関しては,JITシステムの導入など「リーン」化が一つの柱であるが、それを安定的に支える労使関係の組み替えは進行中とはいえまだ十分ではない。(3)労働力のパート化や「JIT」化が進んでいるが、マクロ経済的な安定的拡大の関連が確立されているかどうかさらに解明が必要である。(4)産業的再生の現状を景気循環要因と分離して評価する必要がある。
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