本年度は、パートタイマーと正社員の賃金格差について分析をおこなった。使用したデータは日本労働研究機構が1990年に集計した『パートタイム労働実態調査研究』の個票である。分析の結果、日本の正社員とパートタイマーの賃金格差は、両者のもつ人的資本の蓄積の差ではなく、その多くは人的資本の収益率の差によってもたらされていることが分かった。なかでも勤続にともなう賃金上昇率の差が賃金格差の大部分を説明していることが分かった。職場が高齢化するなかでこういった賃金体系の違いが今後労働力に占めるパートタイマーの割合をますます高めるとおもわれる。 日本のパートタイマーの多くは正社員と同じ労働時間働いている。他方、欧米諸国では短時間はたらく労働者をパートタイマーとよんでいる。この違いは労使関係や労働市場の構造的な特徴と関連している。現在は、非典型的な就業形態の増加をドイツやアメリカと比較しながら、労働市場の柔軟性(flexibility)と非正規労働者の増加の関連について考察している。 さらに、労働省の『雇用動向調査』を使って、パートタイマーの雇用数が景気の動向に左右されているのか(パートタイマーは景気の安全弁なのかどうか)をデータで実証した。
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