本年度はイランの経済の構造について、重点的に研究をすすめた。本研究におけるイランへの主な関心は、1925年のパフラヴィー朝成立以降、精力的に行われたイランの近代化政策が、なぜ破綻をきたし、資本主義でも共産主義でもない、イスラームへの再興というかたちをとったのか、またそこでの経済の構造転換はいかに行われ、そして近代西欧的な発展志向とは異なる経済のあり方は、どのようなものであるかという点にあった。 これらを検討するために、まずイラン革命の思想的背景を、シャリーアティーの『イスラーム再構築の思想』の翻訳を完了した。そこでは近代化政策が疎外してきた多くの伝統的価値観が明らかとなった。そして次に、いわゆる発展途上国に分類される国々は、近代の国家と経済への反強制的な構造転換によって、伝統的な経済構造に歪みがもたられたことによって、かえって発展から疎外された点について、脱開発的な発展論を検討しながら明らかにした。 このような検討を通して、イランにおいてはいまなお、伝統経済部門が強い影響力を維持している点に着目しながら、近現代におけるイラン経済の歴史的変遷、伝統的なイスラーム経済の活動の基盤や、その特性、国家主導の経済発展との関係、世界規模における構造調整への対応、グローバリゼイションの影響、イスラーム諸国会議(OIC)の開催などについて具体的に検討を行った。
|