本年度は、イランにおいては「弟3次経済・文化発展計画」が国会に提出され、審議が行なわれた年でもあり、その具体的政策をIran Dailyの検索資料をもとに検討を行なった。そこから明らかになったことは、イランも現在、他の第三世界諸国と同様の経済問題を抱え、イスラーム的な社会・経済政策の推進を全面に掲げているイランにおいてさえも、その解決のために政府はIMF的な構造調整型の政策を採る姿勢をみせている。 構造調整は、経済再建の万能的処方とみなされる傾向があるが、多くの第三世界においてそれはうまく機能していないのが現状である。なぜならば構造調整政策は、端的に言えば、当事国が伝統的にもっている社会、経済構造を、経済先進諸国にとって有利なように改革、調整するものであることから、しばしば拒絶反応をおこすのである。しかしグローバル化が進展する現在、構造調整的な政策をまったく無視することも困難である。 したがって最終年度の本年度は、この構造調整政策を軸として、イラン、エジプト、シリアを比較し検討した。そのための文献調査に加えて、エジプトやシリアの政策に詳しい専門家と共同に研究を進め意見交換を行なって比較した。そこでは3国に伝統的なイスラーム社会・経済構造の強弱と、構造調整の成功の度合いの関係を検討し、それぞれが抱える経済問題の根源について考察した。
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