本年度は、日本を含むアジア諸国におけるNC(数値制御)工作機械の生産と普及に関する資料を日本工作機械工業会、アジア経済研究所、JETRO等から集め、特に、中国のケース、タイのケース、そしてインドのケースについて検討した。 その結果は、すでに、論文「アジアの工作機械生産と技術移転問題」(「アジア・アフリカ研究」第37巻第2号、1997年12月)として発表した。この論文の最後の節でのべているように、現代技術革新の典型である数値制御工作機械がアジア発展途上国において普及するためにはコストと市場によって制限されることがわかる。 外国からの輸入であれ、外国資本の投資によるものであれ、あるいは技術協力による生産であれ、この機械が発展途上国の工場に設置されるかぎり、途上国の人々が、この技術にアクセスすることができる。この機械設備を操作し、維持することができるかぎり、そこでの生産の仕方を変革する。しかし、それによって、直ちに、これらの人々が、この技術を取得したわけではなく、また、増大した利益を享受するわけではない。むしろ社会的な問題を増幅する可能性がある。これが今後の課題となる。
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