本研究の課題は、創業(1872年)から鉄道国有化(1907年)にいたる日本鉄道業の形成過程を、従来、必ずしも技術史研究の対象となってこなかった経営的技術をも視野に入れ、技術者(技能者)の養成・集積・組織化という視角から見直すことにある。 四カ年計画の初年度である本年度は、(1)技術者の学歴・履歴調査と、(2)鉄道技術者のデータ・ベース作成を計画していた。この内、(1)に関連して、まず6〜9月に交通博物館、国立公文書館、国立国会図書館などでとくに官営鉄道と日本鉄道会社の運輸技術関係資料の調査を行った。その一方で、8月以降、数度にわたり九州で九州鉄道会社、筑豊興業鉄道会社の技術関係資料の調査収集をおこなった。この過程で、官営鉄道と日本鉄道会社の運輸技術形成について、一定の見通しが得られたため、9月と10月の二度にわたり、学会報告をおこなった。ちなみに10月の報告である経営史学会全国大会共通論題報告「日本鉄道業における運行システムの形成」については、現在、その一部を雑誌論文として取りまとめ中である。また九州地方の鉄道企業については、研究発表欄記載の共著『明治の産業発展と社会資本』に「第8章 炭鉱業の発達と鉄道企業ー筑豊の場合ー」という論文を執筆した。 一方、(2)に関しては、現在、各地の調査で撮影したマイクロ・フィルムの現像・焼き付けと、複写もしくは購入資料の整理を行っている段階である。今後、さらに多くの事例を集めるとともに、データ・ベースのフォーマットなども考えていく必要がある。
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