(1)戦前日本における各種失業統計の作成過程の特徴を、内閣統計局の記録等によって確認した上で、統計企画者の指示事項が、実際の統計作成に際して、職業紹介所ないし市町村の統計業務担当者によってどのように適応されたのかについて分析した。この結果、理論的に定められた統計的規則が実際には現場の統計作成者側の都合によって相当程度修正されていたこと、したがって統計を利用する際には統計規則だけではなく、実際の統計把握過程にも留意しなければいけないことが明らかになった。 (2)失業者として統計的には一括して把握されている者の中に、長期雇用機会から別の長期雇用機会へ移行する際の摩擦的な失業者、頻繁な転職を繰り返す若壮年失業者、滞留的な中高年長期失業者のように、明確にその性格が異なる者が存在したことを、他の就業関係統計と関連付けることによって明らかにし、従来の失業統計を可能な限りこの種の失業者類型ごとに区分し直し、地域別・職業別・産業別・年令階層別等の基準にしたがって再集計する作業を進めた。 (3)失業救済事業等の失業者対策が採られることによって、失業統計の数値が大きく変化した事実(たとえば失業救済事業に就職したこによって統計的な意味での失業者ではなくなったことなど)を確認し、失業者対策がなされなかった際の失業者数を推計し、失業者対策の政策的効果の大きさについて推定・評価を試みた。 (4)失業者の意識、生活実態、求職行動等について、新聞・関係機関誌等から把握できる情報類を集積した。
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