研究概要 |
昨年度の研究成果をふまえて、羊毛工業に関する外貨割当政策の機能をより詳細に、かつ論点を拡げて検討した。第一に、羊毛工業に対する外貨割当スキームの変遷を検討し、割当スキームの変更に、輸出振興、設備調整などの通産省当局の産業政策上の目的が反映されていたことを明らかにした。第二に、1951年度から1960年度までの方法別(輸出リンク・設備割当・商社割当)外貨割当額の計数を、当時通産省繊維局麻毛課が作成した第一次資料に基づいて整理した。その結果、輸出リンク・設備割当・商社割当の3つの方法の構成比が、上の政策意図を反映して時期によって変化したことが明らかになった。 第三に、羊毛紡績会社各社の『有価証券報告書』から輸出・設備投資に関するパネル・データを作成し、外貨割当政策が輸出と設備投資を促進する効果を持っていたことを明らかにした。これは前年度、時系列データによって行った分析をパネルデータによって再検証したものである。第四に、輸出リンク割当と各社の外貨獲得率、および設備割当の各社の設備稼働率の関係をそれぞれ分析し、輸出リンク割当が効率的な外貨の使用を促進する機能、設備割当が設備稼働率を企業間で平準化する機能を持っていたことを明らかにした。これらの結果は近く刊行されるJapan and the World Economy,vol.335に発表される予定である。 以上に加えて、本年度は次の分析対象である機械工業に関する外貨割当データの収集を行った。
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