本研究は、日本近世貨幣史に関わる基礎的史料、なかんずく大判座後藤家に関わる史料の収集・整理・解読・分析を中心に行った。大判座後藤家本(後藤本家にあたる四郎兵衛家の史料、東京大学史料編纂所所蔵)の目録型データベースを構築する目的で、入力のもととなる史料カードの整理を行い、同時に、歴史資料のデータベースとしていかなる検索システムがふさわしいのかを、コンピュータ・システム工学の立場から検討した。また、当初の計画にはなかったが、後藤四郎兵衛家のご子孫が、本研究のためにご所蔵の資料を史料編纂所に対して寄託されたので、急遽その整理に着手し、古文書・古記録類の解読を進めて目録カードを作成した。さらに、東京大学文学部考古学研究室が所蔵する古分銅・大判座刻印・試金石などの物品類を借用し、それらの整理を行った。 なお、後藤四郎兵衛家のご子孫から寄託を受けた史料については、肖像画や刀装具など古文書以外の資料も含めて調書を作成した。ただし、三所物に代表される刀装具の詳細な調査は、本研究の本来の目的から逸脱しており、また時間の制約もあって断念せざるを得なかった。 以上の作業に加えて、後藤家の京都における分家にあたる後藤勘兵衛家の史料を、ご子孫のご自宅と寄託先の京都大学総合博物館において調査した。勘兵家史料の本格的な調査は今回が初めてであり、調査は、調書の作成とマイクロカメラならびに一眼レフによる写真撮影をもって行った。 以上の調査等の終了を待って、目録の点検(目録と原本の照合)ならびにデータ入力の作業を行った。作成した目録は冊子体(研究報告書の一部)の形態で発行した後、圧縮ファイルでウェブサイト上から配布する方法を検討し、全国の利用者の便宜をはかる予定である。
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