1900年から1970年代にかけての素材産業について以下のような市場調整・投資調整の段階的変容を概観した。 (1) 1900〜 萌芽的自生的カルテル段階。砂糖・肥料・灯油・銀行業での短期的なカルテル (2) 1920〜 恒常的組織によるカルテル段階。業界団体によるカルテル運営・監視 (3) 1931〜 重要産業統制法によるカルテル助成・監督段階 (4) 1938〜 経済総動員計画による市場・投資の計画化段階。資材配当による生産・設備投資の計画化 (5) 1950〜 行政指導段階。長期見通しの提示による官主導の投資調整と勧告基づく操業短縮 (6) 1965〜 官民協調協議機関での投資調整と独禁法不況カルテルの運用 (7) 1978〜 協調的設備廃棄と組織的市場調整方式の衰退 こうした時期区分に基づいて、さらに製紙業と造船業の生産・設備調整を詳細に検討した。対象時期は、製糸業については1910年代から50年代、造船業については1930、40年代とし、第二次大戦以前の業界団体による自治的調整、戦時・戦後統制期の行政による計画的調整と統制解除過程の実態を分析した。 これに加えて、この間収集・整理した物資動員計画を中心とする戦時総動員諸計画の原資料を編集し、計画立案の背景、立案過程、最終計画文書、実施経過、計画の実績などに区分して資料集を刊行した。
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