研究概要 |
本年度は,実施計画に記した用に,日本の生産性向上運動の国際比較の史的検討の軸づくりに重点を置くことになった。まず,国会図書館,日本生産性本部,諸大学図書館,日本経営史研究所,電機企業などで,基礎的な調査を実施した。この調査では,文献・資料の調査だけではなく,一部,運動の前史にかかわる関係者へのヒヤリング調査も実施した。これらの調査を通じて,本年度はふたつの方向で研究をまとめることにした。ひとつは,1910年代から60年代にかけての生産性向上のためのコンサルテイングの機関や個人の活動の展開を検証することである。その一方で,生産性向上運動の全体的成果を考察するための基礎作業のひとつとして,電機企業関係者の視察の成果および電機産業の発展との関係を検証することにした。 前者の検証では,1910年代の日本で科学的管理法の導入とともに個人コンサルタントの活動が開始され,20年代から40年代前半にかけて,政府の施策ともあいまって組織的な活動が展開されたこと,また戦後直後からGHQなどの指導も刺激となって新しい団体がいくつか結成され,戦前から戦後直後までのそれら団体の活動及びその担い手が,1950年半ば以降の生産生運動の基礎となったこと,などが明らかにされた。また後者の面の検討では,とくに電機関係者のアメリカ生産向上の視察で,日本のように顧客ニーズが多様な国でも量産システムの実施が可能であることを認識したこと,提案制度やデザイン組織の方法の導入という面の直接的成果があったこと,運動の時期と技術導入期の一致,などが確認された。 なお,本年度の以上の研究成果の一部は,1997年9月13日にパリで開催された日仏経営史会議,同年9月18日にカーンで開催された国際経済史会議プレ・コンファランスで報告した。
|