昨年度に引き続き、鹿児島市の尚古集成館所蔵文書の採訪と複写を続行し、資料の分析と成果発表を行うことができた。 特に、上記所蔵文書のうち、昨年度収集資料の補充を心がけ、尚古集成館の研究員の方々による研究成果(松尾千歳「明治初期の島津家資産をめぐる諸問題」『尚古集成館紀要』第七号 平成六年三月刊、同「明治六年ヨリ同十一年ニ至ル 諸会社届書」『尚古集成館紀要』第八号 平成八年三月刊)をも参考にして、その成果の一部を「鹿児島紡績の成立と展開(上)」(『専修経済学論集』第33巻第3号、所収)として、平成十一年三月に発表することができた。 従来、絹川太一『本邦綿糸紡績史』、特に第一巻に依拠した先行研究を批判的に検討し、上記「新資料」を基礎にして、創業期から明治中期の始めまでの鹿児島紡績所の動態を明らかにしようと努めた。さらに、「経営資料」ともいうべき「営業費計算書」ないしは「貸借対照表」を基礎にして計数的にも鹿児島紡績所の推移の検討を続けたい。また「島津家家産」という視点も十二分に考慮しながら、成果の発表に努めたい。
|