本年度は、本研究(「近代日本と地方企業家-諸井恒平の企業家活動-」)の最終年度であった。そこで、夏休みまでは資料調査などに時間を割いたが、夏休み後は実績報告書の作成に集中した。 諸井恒平の中心的な事業は、煉瓦製造事業、鉄道事業、及びセメント製造事業であったが、それだけにとどまらず恒平は武蔵水電・帝国電灯などの電灯事業にも関係していた。また、日本工業倶楽部の設立にも尽力し、鉄道事業でも秩父鉄道だけでなく、西武鉄道や東京大宮電気鉄道などの、いわゆる都市近郊鉄道の経営にも関係していた。このように恒平の企業家活動はきわめて広範にわたっていたため、資料調査の範囲も当初構想していたよりも広域化することになった。とくに、諸井恒平の秩父鉄道以外の鉄道業や電灯事業への関わりについては、これまでほとんど明らかにされていないので資料調査にかなり時間を割かなければならなかった。日本工業倶楽部との関係については、幸いかなりの文献を集めることができた。また、『恒平日誌』についても解読を進めることができた。 しかし、以上のような成果にもかかわらず、実績報告書は日本煉瓦・秩父鉄道・秩父セメントにおける諸井恒平の企業家活動を中心にまとめざるを得なかった。『恒平日誌』の残りの部分の読解とともに、まとまった研究成果を発表するには3年間は余りに短かすぎた。本研究での成果を踏まえてさらに研究を進め、諸井恒平の企業家活動の全貌を明らかにすることは今後の課題としたい。
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