1.関係論文・資料等の検索・収集することで、東アジア諸国の金融の自由化・国際化の進捗状況を調査した。1970年代中頃にシンガポール、末頃に日本とマレーシア、1980年代始めにフィリピンとインドネシア、中頃にはタイと韓国がそれぞれ金融の自由化と国際化を、開始した。開始時点や進捗状況は各国で異なるものの、外国の金融市場の影響を無視できない程に自由化が進んでいる。 2.東アジア諸国の為替レートや金利などのデータファイルを作成した。他方、それらのデータを分析する手段であるJohansen&Juseliusの方法に対する理解を深め、また、その方法にもとづいて計算するプログラムを作成した。 3.計測結果。3.1.韓国・インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポールと日本の2国間で、名目為替レートは2国間の名目金利差に依存し、価格差には依存していない。また、実質為替レートは実質金利差と共和分の関係にあることが予想される。3.2上記の東アジア諸国と米国の間で、実質為替レートと実質金利差の間には共和分の関係が存在しない、または、存在しても自国実質金利が相対的に上昇すると実質為替ルートを切り下げる結果となり為替理論の命題に反する。しかし、生産性格差との間には共和分の関係が存在し、生産性が上昇すると実質為替レートを切り上げて為替理論の命題を支持する。3.3日米間の為替レートについては、名目為替レートは両国の価格比に一致して伝統的な購買力平価説を支持する。 4.研究成果の発表。3.1の計測結果は97年4月の生活経済学会で、3.2の計測結果は佃良彦氏と共同で97年9月の理論・計量経済学会で、3.3の計測結果は98年1月のPacific Rim Conference でそれぞれ報告された。
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