研究概要 |
1. 1997年度に発生したアジア金融危機の教訓から、対外債務とくに短期債務に関するデータを再収集し、さらには、南アジア諸国と比較検討することで、東アジアの金融自由化・国際化の進展を比較調査した。急進的な金融自由化政策が金融危機の要因に深く関与しているとの帰結を得た。 2. 金融危機の教訓から、先行研究で指摘されてきた以上に主要先進諸国と東アジア諸国との金融リンケージは強く、しかも、最近の2-3年の間に密接な関連が形成されつつあると推測される。とくに、これは、上記1の「アジア金融危機の要因」の研究を進める中で明らかとなった。そこで、前年度に研究した以外の為替決定モデルを使い、分析対象国を拡大することで、金融リンケージの強化を検証した。次の題目で以下の学会で報告された。 「The monetary approach to the exchange rate」 『東北経済学会』(1998.9),「Real Exchange Rate Determination:Empirical Observation from East-Asia Countries」 『金融学会』(l998.10)。さらに、これらの研究を進める上で必要とされる統計学的および経済学的基礎研究も行なわれ、次の論文として執筆された。「日本における実物的景気循環論の妥当性」,「The Non-Walrasian Model Recosidered」,「Internationalization and Pensions Funds」,「Testing PPP hypotheses in the five-dimentional VAR model」,「日本の経済時系列の単位根検定と屈折トレンド」。 3. 異なる国の間で金利・為替レートのグレンジャー因果を検定することは本年度の研究目的の1つである。しかし、因果性をVARモデルを使って検定する場合に、トレンドの屈折を考慮すべきであるという指摘が今日では強くなされている。Tsukuda&Miyakoshiの方法は屈折を考慮しているが、そのより厳密な取り扱いは議論されていない。今日、この方面の研究は未解決であり、本研究もそれを解明すべく積極的に取り組んでいる。
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