研究課題
基盤研究(C)
1 土地保有税制度の国際比較従来土地保有税制度の国際比較研究は、法制度面からの比較が中心に置かれ、運営の実質面には立ち入らなかった。本研究は土地保有税課税ベース変更の可能性を問うという問題意識から、課税ベースの評価方法や、負担調整のあり方等、現実の運用面に光を当てることを心がけた。現地ヒアリングを行っていないので十分とはいえないが、固定資産税の課税ベースのあり方について、諸外国の制度から重要な教訓を引き出すことができた。2 土地評価と土地保有課税負担の実証・現行の土地評価方式と負担調整等緩和措置の組合せのもとでは、固定資産税の簡素な運営指針は得られない。実質税率、土地保有税負担率(対GDP)のいずれも、安定的でアカウンタブルな数値をもたらすものでない。このことが、マクロデータからも、都道府県別データからも明白になった。地点サンプルデータに基づく実証分析は、将来に残された。3 土地保有税課税標準(課税ベース)と租税原則地方税のあり方も、「公平、中立、簡素」等の租税諸原則との関係で論じられなければならない。このような議論を従来以上に掘り下げ、固定資産税の課税標準を土地収益とすることの意義を、理論的に明らかにした。また、現実の土地保有課税が、負担調整等のために収益課税的性格を帯びている事実を、統計的に明らかにした。4 課税標準の算定方法本研究の結果は、固定資産税の課税標準を資産価値から収益に切り替えることが、考えられているほどに困難ではないことを示している。収益資産の場合には収益データは直接市場から採取できる。非収益資産の場合にも、想定建物の収益還元価格を計算する過程で理論上の収益が得られる。さらに、資産価値を課税標準とするアメリカやドイツの場合も、課税標準が収益から機械的に還元されている点、収益標準に近いものがある。このことは、資産価値標準の課税制度を、収益課税的に運営することの可能性を示唆している。ほかに諸国の制度から、運営上の教訓をいくつか得ることができた。
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