研究概要 |
研究の初年度として,既存の基本文献の収集・分析ならびに統計データについての基本的な情報の収集に努めるとともに,実地調査を通して問題の所在の確認に全力を注いだ。 とくに実地調査に際しては,県庁(3カ所),市町村役場(9カ所),病院,老人福祉施設等(民間施設を含め十数カ所)を訪問し,高齢者医療と地方財政との関係とくに国民健康保険制度,介護保険制度と市町村財政について,現場の担当者からのヒアリングを行った。それぞれの調査箇所は,人口規模,人口高齢化率,1人当りの医療費の水準もまちまちであり,また抱えている問題も様々であったが,問題の広がりを把握するには有意義な調査であった。 われわれの主たる関心である高齢者医療・介護保険と市町村財政との関係を明らかにするために,今年度の調査のまとめとして,市町村が同じく保険者あるいは運営の主体となっている国民健康保健制度と老人保険制度ならびに退職者医療制度の間の資金の流れの解明につとめた。国庫からの補助を見ても,国民健康保険に対する国庫補助などに加え,地方交付税制度を通じる補助なども行われている。さらに,組合健保等から多額の資金が国民健康保険に移転される仕組みが設けられており,各制度間の資金の流れは複雑多岐にわたる。この流れが各市町村のおかれている状況によってどのように変化するのかを明らかにすることによって,地域の視点から見た現行制度の問題点を摘出することができる。 来年度にはさらに実地調査を行ってこの分析結果を補強するともに,保険理論に基づく高齢者医療・介護保険制度の分析を加え,その研究成果を財政学会等で報告するとともに,論文として発表する予定である。
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