研究概要 |
本年度は,香港及びシンガポールに関する金融制度の実態把握とデータの収集を行った.両国とも最近時点では,1997年以来の通貨危機の影響を受け,金融システムの調整過程に入っているが,ここではこうした最近の動きと併せて,1970年代以降における金融システムの変遷に関する全体像を確認するために資料収集を行った.これと併せて,昨年度にデータを収集した,日本・韓国・台湾に関しても最新のデータを追加し,日本に関する基本的な関数の再推定を行った. 上記の制度的な分析と併せて,1997年度に主要なデータを収集した,韓国及び台湾に関して,金融市場の変動を示す主要な関数(貨幣需要関数,貨幣供給関数,金利決定関数)に関する推定作業を行い,日本における結果と比較をした.この上で,国別の推定結果の相違を金融制度・政策運営方式の相違と関連づけて説明することの可能性を探った.これらの研究成果に関しては,論文として執筆中であり,研究最終年度である,1999年度に利用可能な最新データをも含んで,再推定を行い最終的に論文にまとめる予定である. 1997年に発生したアジアの通貨危機の原因が次第に明らかになってきたが,これを分析することをも本研究の課題として追加した.通貨危機の原因を金融面からとらえる考え方と,実物面からとらえる考え方があり,これらを整理する目的で,日本・アジアNIES・ASEAN諸国間の経済関係を,貿易活動を中心に整理する論文を執筆し,近々刊行の予定である.現在の基本的な考え方は,通貨危機の直接の発生原因は,アジア諸国における金融システムの脆弱性であるが,その背景として実物経済面における各種の不均衡があり,この面に対する対応を抜きにして,アジアの通貨危機を語ることができないと言うものである.
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