研究概要 |
1997年度は主として、いじめを傍観する一般の生徒の立場から、どのような要因が彼等を傍観者の立場に追いやり、どのようにすれば彼等にいじめ問題の所在を教師に通報させるインセンティブを与えることができるかという点を、進化的ゲーム理論を援用して分析した。この理論によれば傍観者が(1)いじめを報告する(2)報告しない(3)確率^<**>で報告するの3つの状況はNash均衡である。しかし、3番目の均衡は進化的不安定な均衡(evolutionarily unstable equilibrium)であることを示した。又、いじめを排除するサービスは公共財であり、傍観者の生徒からのいじめについての報告が増える条件は、(1)いじめを報告したときの費用(仕返し等)が小さい(2)生徒がいじめを傍観する事から受ける不効用が大きい(3)教師がいじめを取り上げるのに至るのに必要な最小報告生徒数が少ないこと等が判明した(いじめの経済分析-傍観者達の分析(2)-、関西学院Working Paper Series No.2,1997年7月)。実験により、傍観者達の生徒数が実際にこの様な行動をとるのか検証する為に、ネットワークを使ったシステムが2つ構築された。一つはUNIX上で動くC言語によるネットワークプログラムである(net workを使ったgameシステム-いじめの経済分析(3)一、関西学院Working PaperSeries No.4,1997年9月)。このシステムはセキュリティー上の問題があり、Wor1d Wide Webによる通信システムか開発された(wwwを使ったgameシステム、関西学院Working Paper Series No.5,1997年12月)。今後は、このホームページを利用したシステムのさらなる改善が望まれる。 研究成果はシンポジュウム(インターネット・公共財供給・実験経済学、1997年12月関西学院)が開かれ、又、論文は関西政治経済研究会(1997年4月)、大阪大学社会経済研究所(1997年6月)、情報処理教育研究集会(1997年10月)数理社会学会(1997年3月)にて発表された。
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