前年度は、家庭での役割が仕事上の役割遂行の妨げとなる状況(即ち、ファミリー・ワーク・コンフリクト)が職務満足に及ぼす影響について、筑波大学の卒業生の中から共働きの夫婦を抽出して分析を行った。その結果、以下のような知見が得られた。 1.ファミリー・ワーク・コンフリクトは、仕事生活で体験する満足感に対し、ネガティブな影響を与える。換言すると、家庭での役割が負担となり仕事での役割がうまく果たせない傾向が強いほど、仕事そのものに対する満足度が低下する傾向がある。 2.上記の傾向は特に男性について顕著であり、女性にとっては有意な傾向とはいえない。 「男性は外で働く稼ぎ手、女性は家を守るホーム・メーカー」という伝統的な性役割意識がいまだに根強く残っていることが、ファミリー・ワーク・コンフリクトの職務満足に対する影響の性差の原因となっているのではないかと思われる。今後はこの点についてさらに研究を進めていく所存てす。
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