本年度も昨年度に引き続き日本電気の事業拡張について研究を行った。その際に、本年度はとくに戦略展開と資金調達に大きく貢献した同社のアントルプレナーの経営行動を実証分析の対象とした。また本年度はこれまでの研究の成果を、コンファレンスにおける報告や、出版物などのかたちで部分的に発表する機会を得た。 現在のところ解明された点を以下に記す。 1) 日本電気は、60年代中期を転機に急速な成長を遂げたが、その理由はコンピュータと電子デバイス(半導体等)への多角化にあった。昨年度はこうした事実を資料やデータをもとに確認したが、本年度はさらにこうした企業行動が引き起こされた理由についてを検討した。 2) 本年度の研究の結果、日本電気におけるこの60年代の経営戦略や資金調達上の転機が、主として同時期の経営者である小林宏治の構想に基づいて遂行されたものであったという事実が判明した。そこで研究ではこうした日本電気の事業の実態と、小林宏治のアントルプレナーシップとの関係を明らかにすることが試みられ、その企業構造と経営行動のダイナミズムが明らかにされた。 3) 本年度の研究では、日本電気の資金調達という構造的な要因と、その構造を作り出したアントルプレナーの経営行動との関連性を解明するという視座から、日本の小電機メーカーであった日本電気が、テクノロジーをコア・コンセプトにして世界的な大企業になっていった経緯が歴史的に記述された。 次年度以降さらにこれらのテーマについて分析を深める。
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