本年度も日本の情報産業の展開について研究を行った。その際に、日本企業の競争構造に着目し、コンピュータ産業を対象として、産業政策の立案および実施という観点から分析していった。またこうした成果については、昨年と同様に、コンファレンスにおける報告をはじめとして、発表する機会を得た。 本年度明らかにされた点について、以下に記す。 1)日本のコンピュータ産業は、その初期から急速に成長したが、その理由は、通産省による育成策あるいは保護政策というよりはむしろ、「競争」と「協調」の巧みな組合せによる政策にもとめることができる。こうした事実発見については、昨年度確認することができたのであるが、本年度はこうした政策の特徴をさらに検討した。 2)本年度の研究の結果、競争と協調の関係について、次のような知見をえることができた。すなわち、産業レベルにおける企業行動を、研究開発、製造、ソフトウェア、販売の4つの分類した場合、通産省は、研究開発および販売においては、FONTACおよびJECCを設立するなど、「協調」を促す政策手段を策定し、製造においては、日本のコンピュータメーカーを市場において「競争」させることとした。こうした「協調」と「競争」の巧みな組合せによる政策とあいまって、日本のコンピュータ産業は、早期に世界市場において地位を確保したということが明らかになった。 3)以上から理解されるように、日本のコンピュータ産業の成長を説明してきた、「市場競争」かどうか、あるいは「保護育成」かどうか、といった従来の説明構図を越えた、新しい視座を得ることができた。
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