研究概要 |
今回の調査結果から、元方の事業特性が一次下請け企業行動の制約要因となっている点が確認された。 日立市に集積する日立製作所の重電・電力,家電,自動車部品,電線等の事業所は、いずれも業績的に厳しい内容となっており、なかでも重電・電力事業は、もともと低成長事業であったことに加え、国内依存度が高く、電力各社の設備投資抑制によって一次下請けに深刻なしわよせが現れている。その代表的な一次下請け企業で、変電関連機器製造企業である茨城電機工業(株)でも、その優れた技術力を梃子に日立以外の東芝等からの受注獲得に向けた体制作りが行われている。それは、海外進出によらず国内に留まり、かつ従来の事業範疇で競争力を高めていくことによる生き残りである。 また日立製作所の自動車機器事業の一次下請け企業である(株)コーヨーでは、日立製作所を通じて日産自動車向けのスタータモータ用部品等を製造してきているが、高齢化社会を迎え有望な成長産業として見込まれるシルバー・ビジネスの一つである「電動車椅子事業」を新規事業として取り組んでいる。これまで培った自動車部品の製造技術を梃子にの新規参入であるが、資金力、人的資源など中小企業の持つ制約要因以外にも、一定の量産規模と価格競争力、販売体制とアフターサービスなど克服すべき難題が山積している。既存事業である自動車機器事業とは別に、新規事業を別会社化していきながら生き残りをかけることはこれまでなかった新たなライバルとの競争関係に晒されることであり、元方からの協力には自ずと限界が出てきている。
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