今年度も昨年度に引き続き、製品開発(新製品開発及び製品開発)の意志決定プロセスにおいて、製品開発戦略、市場戦略が開発プロセスにいかなる影響を及ぼすかについての調査・検討を進めた。特に本年度は、研究の最終年に当たるため、頭記の研究テーマにあげられている「国際比較」に焦点を当て、これまでの日本およびフィンランドにおける事例研究の結果を解析し、両国の製品開発挙動、システムにいかなる相違・共通点があるかについて検討した。 概要的な結論から述べれば、一般にフィンランドの企業は自社の他社と差別化がはかれる固有技術を中心に開発を行うテクノロジー・オリエンテッド型であるのに対して、日本の企業はユーザーのニーズ調査から始め、これに対応する技術開発を行う、ユーザー・オリエンテッド型であると考えられる。勿論業種、対象市場、製品の性質によってそれぞれ異なるが、これまで提案してきた製品開発の基本モデルそのものについての大きな差異は見いだせなかった。 これらの成果は1999年8月にアイルランドで開催された第15回ICPR国際会議で研究発表し、さらにフィンランドの共同研究者と共にスウェーデンで発表した。 研究期間に、当初の問題である、製品開発のシステム、プロセスの一般的なモデルおよびその挙動は事例調査などを通じて明らかにし、その成果は主にヨーロッパにおける国際会議で研究発表し、一部を研究論文として発表することが出来たが、国際研究の点では、それぞれの国の文化的、歴史的背景の違い、製品開発に対する経済的、技術的背景の違いが、製品開発プロセスにいかなる影響をおよぼすかの定量的解析はこれからさらに明らかにせねばならない問題として残された。
|