研究概要 |
(1)1978年から1995年までの17年間に設定・運用されたすべての追加型株式投信ファンドについてデータを収集し、“成長"、“配当"、“小型株"といった現在用いられている表面的な運用スタイルによるファンドの分類を行った。 (2)表面的な運用スタイル分類に代替えする分類方法として、クラスター分析の手法を用いて、実質的な運用スタイル分類を行った。この分類方法は、ファンドの実質的な運用スタイルをデータの現実の変動に基づいて事後的に決定するものである。月次データが5つ以上ある1,276本の追加型株式投信ファンドを対象に、条件付きグループ平均(K-mean)の手法を用いた結果、8つの実質的な運用スタイルに分類することができた。 (3)ファンドの実質的な運用スタイル分類と表面的な運用スタイル分類の関係を分析すると同時に、実質的な運用スタイルの解釈を行った。表面的な運用スタイル分類では、ファンド間の将来リターンの相違を説明することができない一方、実質的な運用スタイル分類では、ある運用スタイルをとるファンドには共通な期待リターンがもたらされることが示された。 (4)わが国における投資信託の過去20年間の運用実績は極端に悪く、そのあり方が国際的にも批判を受けている。わが国の投資信託の運用実績はなぜ悪いのだろうか。その理由として、高い手数料、高い株式売買回転率、投信委託会社のミス・マネジメントなどが挙げられている。しかし、税によるファンド資産額の希簿化(dilution)効果を明示的に取り入れたファクター・モデルを用いた実証分析の結果、わが国投資信託の運用実績の悪さは、税法の影響を受けたファンド資産額の希簿化効果にあることが示された。 (5)1998年6月にカリフォルニア州で開催されるWestern Finance Associationの年次総会で研究結果を発表する。
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