研究概要 |
1978年から1995年の17年間に設定・運用された追加型株式投信ファンドのうち月次別データが5つ以上ある1,276本のファンドを対象に投資スタイル分類と運用評価に関する実証分析を行った。投資スタイル分類では、クラスター分析の手法を用いて、1,276本の投信ファンドを8つの投資スタイルに分類することができた。この事後的なスタイル分類では、あるスタイルをとるファンドは共通なリターンが期待され、さらに共通な複数のベンチマークに感応する。つぎに運用評価に関する実証分析では、各投資スタイルごとに、所属する投信ファンドのパーフォーマンスを関連するベンチマークとの比較において(マルチファクター・モデルを用いて)計測した。その結果、1つを除くすべての投資スタイルで、投信ファンドのパーフォーマンスは、ベンチマークのパーフォーマンスを年率で3%から5%下回ることが示された。この結果は、わが国の投資信託の運用実績が悪いことを指摘する最近の国際的な研究結果と一致する。しかしながら、追加型投信ファンドの設定価格決定に関するわが国特有の方法の影響として「税によるファンド資産額の希薄化(ダイリューション)効果」を考慮に入れると、すべての投資スタイルで投信ファンドのパーフォーマンスは、ベンチマークのパーフォーマンスと変わらなくなることが示された。このことは、わが国における投資信託の運用実績が悪いのは、わが国税法の影響を強く受けた投信ファンド価格決定制度にあることを示している。 以上の結果を研究論文としてまとめ、米国で開催されたWestern Finance Associationの1998年大会、および日本金融・証券計量・工学学会の1998年冬季大会で発表した。この研究論文は、米国の学会誌で現在投稿審査中である。
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