本年度は3年間の当該研究の最終年度にあたり、研究の総括を行うとともに、研究結果をまとめた論文を米国の学術誌(Journal of Business)に投稿した。ほぼ1年間にわたる審査の結果、論文は受理され、2000年中に論文掲載号が出版される予定である。掲載誌Journal of Businessはファイナンス分野の研究をリードする国際学術誌で、全世界に多くの購読者を持つ。今回の論文掲載を契機として、わが国の投資信託に対する更なる研究が国際的に推進されることが期待される。 これまでの研究成果を要約すれば、(1)初年度(平成9年度)は、わが国の株式投信ファンドの時系列データに対して統計的な手法を用い実質的な運用スタイルの事後的な分類を行った。このファンドの実質的な運用スタイル分類と表面的な運用スタイル分類を比較分析し、実質的な運用スタイル分類こそが投資家にとってより重要な情報となることを示した。(2)次年度(平成10年度)は、実質的なスタイル分類に基づいて投資信託の運用実績に関する日米比較を行い、わが国投資信託の悪い運用実績の原因を税制や組織の観点から検討した。日米比較においては、米国におけるこの分野の第一人者であるNew York大学のBrown教授とYale大学のGoetzmann教授と連絡を取り合いながら共同研究作業を行った。結果、わが国投資信託の運用実績が悪い主たる原因の一つは、税によるファンド資産額の希薄化(dilution)効果にあるあることを示した。(3)最終年度(平成11年度)は、税によるファンド資産額の希薄化(dilution)効果について詳細な実証結果を得、併せてわが国の証券市場政策に対するインプリケーションを検討した。上に述べたように、3年間の研究結果をまとめた論文は米国の学術誌(Journal of Business)に受理され、2000年中に掲載される予定である。
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