昨年に引き続き、企業戦略と組織変革に関するデータベース化を1985年から1997年の期間について図ったが、今年度は昨年作業が終了しなかった流通業と、新たに自動車産業を対象とした。日経TELECOMを利用し、各企業について戦略および組織の変革に関連のある記事のみを検索した後、記事本文の分析を行い、各変革に関する分類と記述を行った。まずそれぞれ4つに分けられた「変革タイプ」と「変革レベル」という2つの次元から、各変革を16のセルに分類するグリッドを作成した。変革タイプは、戦略、組織構造、プロセスおよびヒトに分けた。変革レベルは、企業間、企業内、グループおよび個人に分けた。 その上で、本年度は、日本企業における組織適応、特に経営者交代が戦略および組織の変革に及ぼす影響を分析した。その結果、全般的に見ると、経営者交代は戦略および組織の急進的な変革とは関係がなかった。日本企業はこの間戦略および組織の進化的な変革にはかかわってきたが、それは経営者交代とは無関係にであった。また、これまた経営者交代とは無関係に、ガバナンス・ストラクチャーが戦略および組織の変革に影響を及ぼしていた。すなわち、企業の業績が著しく悪く、しかもメインバンクが存在する場合には、戦略および組織の変革は促進された。 また、昨年、流通業における情報技術の導入に関する日米比較を行い、日米ともに情報技術導入の先発企業が後発企業に対して競争優位を維持し続けているが、米国ではその競争優位が縮小する傾向にあったのに対して、日本では拡大する傾向にあったという結果を得た。本年度は、こうした日米の違いをもたらす要因について分析を加えた。この結果については、本年8月にシカゴで開かれるAcademy of Managementの年次大会で報告することになっている。
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