研究概要 |
過去2年間に引き続き、流通業、金融業および自動車産業の1980年から1997年の期間について、企業戦略と組織変革に関するデータベース化を図り、今年度は、これまでに作業が終了しなかった部分を対象とした。 その上で、本年度は、流通業における情報技術の導入が組織構造に及ぼす影響について、1980年から1997年までの18年間を対象に日米比較を行った。米国は、情報技術の導入は組織構造に非常に強い影響を及ぼしていた。規模、形態および環境不確実性をコントロールした場合、情報技術は集権化につながっていた。特に、取引プロセス型の情報技術と集権化との間に強い関係が示された。それに対して、日本では、その他の変数をコントロールしない場合、情報技術の導入は組織構造に影響を及ぼしていたが、その効果が米国と比べると非常に弱く、また方向も逆で分権化につながっていた。特に、意思決定支援型の情報技術と分権化との間に強い関係があった。この結果については、本年7月に静岡で開かれるAcademy of Management,Western Divisionの次大会で報告することになっている。 また、本年度は、米国およびドイツで構築されたデータベースも利用して、アジア経済危機後、ヨーロッパ、日本およびアメリカの企業による東南アジアでのマーケティング活動がどのように変化してきたかを理解するためのフレームワークを提示した。企業価値創造モデルに従い、企業のマーケティング活動の変化を「開発」(exploration)と「活用」(exploitation)の2つに分類し、いずれの国における企業も開発よりも活用タイプの変革が圧倒的に多きことを示した。さらに、その国独特の資本主義形態(nation state of capitalism)が制約システムとして機能しるために、アジア危機後のマーケティング活動の変革についても、ヨーロッパ、日本および米国の企業ではタイプや方向性に違いがあることが示された。この成果については、Macmillanから今秋発刊される本のなかに所収される。
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