流通業、金融業および自動車産業について、企業戦略と組織変革に関するデータベース化を1980年から1997年の期間を対象に図った。本データベースでは、各企業について新聞・雑誌記事の検索を行った後、記事本文の分析を行い、各変革に関する分類と記述を行った。そこでは、各変革の鍵となる特徴を浮き彫りにするために、変革のタイプ、組織内で変革が起きた場所、表明された目標およびその理由が記録された。また、戦略タイプ、戦略方針、組織構造なども記述されている。このデータベースに基づき、以下のようなテーマを分析した。 (1)日本企業において経営者交代が戦略および組織の変革に及ぼす影響:全般的にみると、経営者交代は戦略および組織の急進的な変革とは関係がなかった。また、経営者交代とは無関係に、ガバナンス構造が戦略および組織の変革に影響を及ぼしていた。すなわち、企業の業績が著しく悪く、しかもメインバンクが存在する場合には、戦略および組織の変革は促進された。(2)米国と日本の流通業において情報技術が組織デザインに及ぼす影響:米国では、情報技術の導入は組織構造に非常に大きな影響を及ぼしていた。その他の変数をコントロールした場合、情報技術は集権化につながっていた。それに対して、日本では、その他の変数をコントロールしない場合、情報技術の導入は組織構造に影響を及ぼしていたが、その効果は米国と比べると非常に弱く、また方向も逆で分権化につながっていた。(3)アジア危機後ヨーロッパ、日本および米国企業による東南アジアでのマーケティング活動の変化を理解するためのフレームワーク:まず企業のマーケティング活動の変化を「開発」と「活用」の2つに分類し、いずれの国における企業も開発よりも活用タイプの変革に圧倒的に多くかかわっていることを示した。また、その国独特の資本主義形態が企業による変革のタイプと方向性に影響を及ぼしていることを示した。
|