研究者がこれまで行なってきた、多国籍企業の海外進出形態の多様性に関する理論的枠組みを再検討することで、外国企業が日本市場に参入する際の理論モデル構築の作業を行なった。そのために、まず先行研究をサーベイし、次いで在日外資系企業や外国企業と提携関係にある日本企業に対するヒヤリング、新聞・雑誌等の記事サーベイを行なってきた。その結果、 1) 日本に進出する欧米企業がもつ企業特殊的な優位が、日本企業の場合の生産技術上の優位とは異なり、製品技術上あるいは要素技術上の優位に存在している。これらは主として、市場取引にもなじみやすい形式知に依拠している。 2) 欧米企業のグローバル戦略は、地理的な市場ポートフォリオの構築の観点から行われ、ポートフォリオのスムーズかつ迅速な組み替えが重視される。 3) 日本では企業間の信頼や長期継続的取引の普及など、市場での機会主義を抑制するメカニズムが機能している。 4) 日本市場への参入には、市場特殊的なノウハウが重要となる。 の4点に留意する必要があることがわかった。 以上のことから、外資系企業の対日進出は日本企業による技術導入と代替関係におかれ、対日直接投資を対外直接投資や諸外国の状況と比較したときにみられるアンバランスは解消する方向にあると、結論づけられよう。これらを考慮した上での、より厳密な理論モデルについては、近く論文として発表する予定である。 上述の理論モデルを正当化しうるか否かの実証的考察については、現在、外国企業の対日進出形態と、それに影響すると考えられる諸変数についてのデータベースを構築する作業を行なっている。
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